乗り物船舶

船体振動を小さくしたり、良好な船舶無線の環境を保つ等、炭素繊維は船舶にとって最適な素材です。

ボート、ヨット、大型船艇などの船舶にも炭素繊維の活用が進んでいます。炭素繊維を使う最も大きな理由は、やはり軽量化によるスピード向上あるいは燃費向上にあります。たとえば、艇体重量は全てGFRPで建造する場合に比べ、CFRP化することにより約30%の軽量化が達成できます。

船舶用途は従来ガラス繊維複合材料(GFRP)が使われてきた用途であり、織物などの中間基材の形態やその成形法もCFRPに近いため、比較的容易に材料の置き換えができる用途です。航空機やスポーツ用途ではエポキシ樹脂を使うのが大半であるのに対し、船舶用途ではGFRPの歴史から不飽和ポリエステルあるいはビニルエステル樹脂が大半を占めています。そのため、ビニルエステル樹脂との接着性を高めた炭素繊維が開発され、広く船舶用途に活用されています。

比強度・比弾性率の高さだけでなく、CFRPの振動減衰性能を活用し、エンジンおよび補機(ポンプ等)の台座にCFRPを用いることにより船体の固有振動数(共振点)を上昇させ、エンジン及び補機の稼働による船体振動を小さくすることもできます。さらに、CFRPの導電性を活用し、たとえば無線室壁面を炭素繊維複合材料で囲うことで、40dB以上の遮蔽性を得ることができます。これにより、CFRPでは電磁波を透過するためエンジン及び補機から発するノイズにより船舶無線の交信時明瞭な交信が妨げられることがありますが、そのような問題を解決することができます。

また、船舶用途は炭素繊維とガラス繊維あるいはアラミド繊維の織物などを組み合わせたハイブリッドの複合材料が多く使われている用途でもあります。従来のガラス繊維複合材料使いで、剛性が必要な部位にのみ炭素繊維を適用するなど、複合材料の最適設計が生かされ、求められる性能・コストに対応した設計をすることにより、用途を拡大しています。